2015年01月19日

JALの引用符の問題は誰が悪いのか

 日本人が使う「変な英語」がしばしば話題になりますが、「和製英語」と言われたりする英語表現や英単語のことではなく、「英語の記号」のことがTwitterで話題になっていて、興味深く思いました。

quotationmarks02.jpg


 「Suspicious Quotation Marks: 」というタイトルが示すように引用符(=quotation marks)のことです。

 野菜に「私が作りました」とラベルを貼るように、JALの整備士さんが「私が整備しました」というような感じで乗客へのメッセージが掲示された物の英訳を読んだ方が、気づいたのでしょう。

quotationmarks01.jpg


日本語は

私が整備責任者です。
「安心」「快適」な
空の旅をお楽しみください。


英語は
Please enjoy our
"Safe" and "Combortable" flight.
~Your aircraft maintenance magager in charge

です。

 多分、日本語の文章が先に書かれて、それを「英訳」したのでしょう。

 この日本語の文章、特に「」(カギ括弧)の使い方をweb上で確認してみました。(公的なお墨付きのあるところではありません。)

 まず、「」(カギ括弧)は「表記符号」と呼ばれるらしい。
http://web.ydu.edu.tw/~uchiyama/ron/ron_14.html

 同じページに、カギ括弧の使い方が書かれていて、
表記符号用途用例
カギカッコ
「」
1. 短い引用を示す1. パースは「写真は指標だ」と指摘している。
2. 論文などのタイトルを示す2. フィッシュは「文体論と何か」という論文を書き、……
3. 強調を示す3. われわれが理解する「真実」とは、……


 あるいは
http://bunsho-labo.com/12

1.短い引用を示す
例:俺は「JKはブランドだ」と考えている。

2.文章のタイトルを示す
例:俺は「カギ括弧の使い方」という記事を書いた。

3.強調を示す
例:みなさんが考える「女子高生」とは何だろうか?

 実は意外なことに、「カギ括弧を会話文で使う」という使い方は無いのだ。
 友人や知人との会話を書くことを「引用」と捉えるからこそ、このような用途が多いのかもしれない。


 さて、では「第一ライン整備課長」さんは、どの用法のつもりで乗客へのメッセージの中で、「安心」「快適」と書かれたのでしょう。(実際には口頭で語り、それを誰かがコンピュータに打ち込んだのかも知れませんが。)
 多分…3(どちらの説明でも共通ですね。)の「強調」でしょう。カギ括弧以外の方法で強調するとしたら何を使ったらいいでしょう。
 下線だと何かの説明書みたいですし、ボールドにしようとしても全体がゴシックで書かれているので目立ちませんし、イタリックも日本語ではあまり使いませんし、色を変えると強調されすぎて違和感があります。
 これらは私の考えですけどね。
 それで、カギ括弧を使ったのだと思います。
 そもそも、どうして「第一ライン整備課長」さん(か、タイピスト氏)は件の2語を強調したかったのでしょうか。もちろん、人を運ぶ上で、「安心」「快適」は最も望まれることです。これって「第一ライン整備課長」さんの独自の考えではなくて、別の言い方をすれば、99%の人が望む「ごくありふれた」事柄です。ですから、強調のしすぎは、英語の引用符の使い方以前として変な気もします。
 そのことを考えると、実は「強調」ではなく、(我が社はもちろん、乗客の皆さんが望んでいる、あの)「安心」「快適」と引用をしているのかも知れません。

 以上、2つの可能性が考えられますが、書かれている短い文章は、正直なところありふれた、定型的な内容ですし、それを読む人もそこに特別なことが書かれていることを期待する場面ではありません。したがって、本人の意図なのか、タイピスト氏の意図なのかは分かりませんが、カギ括弧を使って、強調あるいは引用をして目を惹く必要はなかったのではないでしょうか。
 それでも、この日本語を読む日本人なら必要以上の丁寧さ、形式的な言動になれていますから、これでも宇良かったのかも知れません。

 問題は、これを英訳するそのやり方が悪かったのではないでしょうか。

 カギ括弧と英語のquotation marksは必ずしも同じ性質ではないのに、できるだけ「忠実」に「英訳」をしようとした結果だと思います。

http://ameblo.jp/cospoli/entry-11224237947.html
が、分かりやすく説明をしてくれています。

1つ目です。


発言、格言などの引用
これは文字通りの使い方です。小説や新聞の記事などが直接話法で書かれているのを読む機会は多いですが、アカデミックな論文やビジネス文章のライティングで自分が直接話法を使って人の発言を引用することはあまりないと思います。が、読書感想文(book report)などでは必要とされるword数を増やす重要なテクニックですね。

 (「word数を増やす」は取り消し線が付けられています。今回の私の話題とはべつですが、もちろん意味がありますね。)

 そして2つ目です。


引用符で囲まれた単語やフレーズは様々な目的で読者の注意を引くために用いられます。
例)She ran around with a bunch of 'intellectuals'.

 確かにその通りですし、JALの英訳者もそのつもりでいたのかも知れません。
 しかし、まだ続きがあります。
ただ、この「目的」の中でも皮肉や反語として使われることがかなり多いので、単に強調したいだけの時に引用符を使うと読み手に混乱させてしまうリスクも伴います。Chicago Manual of Styleでは強調はイタリックか太字で修飾することを推奨しているようですが、個人的にはフォント修飾ってHTMLでもワープロでも面倒だし、もう相当数の「強調引用符」が世の中に存在してるので、今更用途を限定的にするのは難しいんじゃないかと感じています。
ただ、このテーマの最初の記事でも書いたように各学校、会社、業界のスタイルが全てに優先する世界なので、長いものには巻かれておいてください。

(下線部は、当ブログ管理者)
 正に、今回のトラブル…というよりも笑いものの種にされた原因が書かれています。
 「面倒・・・もう相当数の「強調引用符」が世の中に存在してる」とありますが、公の場での掲示ですからこういう理解に甘んじてはいけないと思います。
 それにすでに述べたような理由から、改めて強調するほどの名文句ではないはずです。

 引用元では、続けて面白いことが書かれているので紹介します。
また、この強調引用符をジェスチャーで表す「Air Quotes(またはFinger Quotes)」なるものが欧米には存在します。ピースサインした両手を目の高さまで上げて、強調したい単語を話す時に「クイッ、クイッ」って指を二回曲げるアレです。外国人がやるのを見たことあるけど、何の意味かわからなかった、って人結構いるんじゃないでしょうか?
こちらは書き言葉ではないので、まだ従来通りの「皮肉や反語」として単語を使うタイミングでクイクイします。逆にコメディーなどでは全然関係ない単語のところでAir Quotesを使うことでウケを狙ったりします。


 ここまで笑いものの話題にされてしまったので、JALさんは当該の表示を、最低限英語の文、できれば日本語の文も書き換えた方がいいように思います。

※今日のブログは、意図的にカギ括弧を多く、でも気をつけて使って書いてみました。
 2つの他サイトから引用をして共通する3つの使い方を紹介しましたが、日本語でも皮肉を込めた引用に多く使うことがあるのに、「引用」の項目には書かれていませんね。


posted by kewpie at 11:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 言語・文字
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