2020年03月08日

「翼をください」の新聞特集記事

 「翼をください」の新聞特集記事を撮影したものがありました。

翼をください・特集記事.png


うたの旅人
三重・志摩半島

名曲の予感はなかった
   山上路夫作詞、村井邦彦作曲
   赤い鳥「翼をください」

 真珠養殖発祥の地として知られる三重県志摩半島。複雑なリアス式海岸にあって、半島の中の半島である大崎半島の大部分を占めるのが「合歓の郷(ねむのさと)」だ。
 300万平方bの広大な敷地には、ゴルフ場やマリーナな

ど、リゾートと聞いて思い浮かぶあらゆる施設がそろう。よそにはないのがミュージックキャンプと呼ばれる一画で、屋内外二つのホールや録音スタジオ、大小の練習スタジオを擁する。
 開業は、地方がバブルに踊った1987年のリゾート法制定より、20年も前にさかのぼる。「日本にエピクロス(快楽主義)を」。そんな掛け声で社員に発破をかけ、戦前からの楽器メーカーであるヤマハの多角化を推し進めた川上源一社長(当時)肝いりの施設だった。
 4年前に三井不動産グループに譲渡され、ヤマハとの縁は切れた。ミュージッックキャンプマネジャーの肩書きを持つ河村浩さん(58)は苦笑いする。
 マネジャーと言っても、担当者は私1人なんですけどね」
 数千人を収容する野外ホールも、今はほとんど使われていない。ポピュラーソングコンテスト(ポプコン)を始め、ヤマハ主催の様々な音楽イベントの会場として全国に名をとどろかせた時代もあったのだ。
 「翼をください」が初披露されたのも、そんなイベントの一つだった。70年11月の「合歓ポ

ピュラーフェスティバル」。当時の資料には「第一線で活躍中の作曲家が未発表のオリジナル曲を持って参加するユニークな新曲発表コンクール」とある。
 普段は裏方である作曲家が主役だった。大学を卒業してすぐにヒットメーカーの仲間入りをした村井邦彦さん(66)の時論にも沿っていた。弱冠25歳。著作権を管理する音楽出版社アルファミュージックを設立したのは、その前年のことだ。
 「その頃、美空ひばりさんの持ち歌を別の歌手がカバーし、ひばりさんサイドが激怒するという事件があったんです。歌は誰のものかって話ですよね。歌は作り手のもので、多くの人に歌い継がれてこそ価値がある。それをはっきりさせたかった」
 コンビを組むことが多く、アルファを共同で設立した山上路夫さん(75)が作詞を託された。まず用意したのは、「希望」と

題した別の詞だという。
 「ところがクニはその詞をまったく無視した曲を返してきた。そこで、曲のスケールに負けないよう一から書き直したのが『翼をください』です」
 このやりとりに時間がかかり、東京から車を飛ばして駆けつけた村井さんが、5人組のフォークグループ「赤い鳥」に楽譜を届けたのは開演2時間前。コーラスアレンジをその場で完成させる慌ただしさだった。
 5人はそろって、初演の手応えを覚えていない。歌いこなすのに精いっぱいだったからだ。
 「翼をください」は翌年2月、赤い鳥の3枚目のシングルとして発売される。長く歌い継がれる名曲誕生の予感はなく、B面扱いに過ぎなかった。
      文・坂本哲志
    写真・豊間根功智
   e2面に続く


♬ song ======================

今 私の願いごとが
かなうならば 翼がほしい
この背中に 鳥のように
白い翼 つけて下さい
この大空に 翼を広げ
飛んで行きたいよ
悲しみのない 自由な空へ
翼はためかせ 行きたい

今 冨とか 名誉ならば
いらないけど 翼がほしい
子供の時 夢見たこと
今も同じ 夢に見ている
この大空に 翼を広げ
飛んで行きたいよ
悲しみのない 自由な空へ
翼はためかせ 行きたい
      JASRAC許諾

 山上路夫作詞、村井邦彦さん作曲。1971年2月、フォークグループ「赤い鳥」の3枚目のシングル=写真=のB面として発売された。多様に解釈される歌詞だが、山上さんによると、「現実から逃げ出すため、翼が欲しいくらい忙しかった私自身の素直な気持ちを書いた」とか。「今 冨とか〜」で始まる2番冒頭の歌詞は、曲の長さを抑えるためにレコードでは省略された。
 A面の「竹田の子守唄」は被差別部落に伝わる民謡だったため、テレビやラジオで放送が自主規制されたことで知られる。
 赤い鳥は74年9月に解散。オリジナルメンバー5人のうち、後藤悦治郎さん、平山泰代さん夫妻は「紙ふうせん」を結成し、現在も関西を拠点に活躍。山本俊彦さん、潤子さん夫妻と大川茂さんの3人は「ハイ・ファイ・セット」として94年まで活動した。


2011年(平成23年)11月12日 土曜日 
朝日新聞 be on Saturday
タグ:赤い鳥
posted by kewpie at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽
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