「文末の『わ』は女性が使うと以前あなたから教えられたが、男の人でくり返し『わ』を使っている人がいる。この人はゲイなのか?」という内容です。(LGBTQの観点はさておいてということで、話を進めます。)
確かに多くの場合は、女性が使う「〜わ」です。私の妻がよく使うことがすぐに思い浮かびます。
考えてみれば、男性が使う場面もあることも思い浮かびますが、どんな状況でのことなのか、はっきりと分からないので、辞書に頼ることにしました。
わ
《助詞》
(終助詞)
@呼びかけを表す。万葉集(13)「小子(わくご)ともいざ―出で見む」
A(係助詞ハの転。習慣で「は」と書かれることが多い)活用語の終止形を受ける。
(ア)詠嘆・感動を表す。狂言、入間川「おいとまを下された―」。古今集遠鏡「これは、アレ鷹がかへるワ、アレ松虫の声がするワなど訳すべし」。「よく言う―」「出る―出る―」
(イ)(女性語)軽い王張・決意・詠嘆を表す。「もう帰ります―」「あらすてきだ―」
実は『広辞苑』ではこれだけなのですが、同じ電子辞書に収録されている『精選版 日本国語大辞典』でも調べてみました。
わ
《終助》(係助詞「は」の文末用法から出たもの)会話文末の活用語の終止形を受けて感動を表わす。「は」と表記されることも多い。→終助詞「は」。
@発言内容を感動をこめて確認する。
*天草本平家(1592)二「コト ガ デキタ ua<ワ>トユウテハセムカワウゾ」
*石川五右衛門の生立(1920)<上司小剣>九「まア、何んでもええわ。こっちへおいで」
A(@の用法から)「わ」で終止する短い感動の文をたたみかけて用いる。
*寛永刊本豪求抄(1529頃)四「随意に今日は寒く(さむい)は。暑(あつい)は。雨がふるは。風が吹くは。などいわすぞ」
B表現をやわらげて発言内容を確認し、軽く聞き手に働きかける女性語。
*当世書生気質(1885-86)<坪内逍遙>一「姉さんがやらなけりゃア、妾だって否ですワ」
共通して、「女性語」として使われる以前に、「感動」「詠嘆」「確認」などの気持ちを込めて用いる助詞として使われていることが説明されています。(列挙で使われる「〜わ」または「〜は」もありますが。)
ただ、『精選版 日本国語大辞典』では、「わ」について、かなり詳しい説明が加えられています。
(1)Aの用法は、結果的に列挙表現となるが、「わ」それ自体はやはり感動の表現である。
(2)Bの用法は@の用法から出たもの。江戸時代以前には男女の別なく用いられた@の用法が、明治以後男女により差が生じてきた。頻度的に女性に偏しただけでなく、女性使用の場合にはBの用法が主流となった。@の用法は話者自身に対しての確認のニュアンスがあり、相手に対しては、ややつきはなした尊大な物言いとなるが、Bの用法は聞き手を意識して、相手の同意を期待する確認で、また@とBではイントネーションも異なる。
元々@の意味で使われたものが、その後、ややニュアンスを変えて女性のみに使われるようになった、ということになります。イントネーションも異なるというのも、その通りです。
私は@の「わ」は使いません。これはこの説明にある「尊大な物言いとなる」ということを無意識に感じているのかも知れません。さらには、この「わ」は関西の人の方が多く使うような気がしますが、どうなのでしょう。