曹雪芹(そうせつきん)の代表作『紅楼夢(こうろうむ)』。金陵に住
む大貴族・賈家(かけ)の貴公子、賈宝玉(かほうぎょく)と12
人の女性との悲恋物語を主軸にしなが
ら、賈家がたどった盛衰の歴史を描い
た長編小説で、数百人もの男女が登場
する。18世紀初頭の貴族の生態が活写
された、大河小説の趣を持つ作品だ。
「ユン・チアンの世界的なベスト・セ
ラー、『ワイルド・スワン』も涙を流し
ながら読みました。これは、作者のユ
ン・チアンが母の口から聞いた、家族
の歴史をもとに書かれた作品ですが、
文化大革命期の一家のたどった過去を、
母娘3代にわたっての家族の数奇な運
命を軸に、壮大な歴史本としてまとめ
ています。読み進みながら、同じ女性
として性差別や階級差別に複雑な思
いがありましたね」
一番好きな作家は
台湾の歴史小説家高陽
ヒストリー&サスペンスが好きだと
いう彼女が、最も凝っているという作
家を教えてくれた。
「歴史小説家として、一番好きな作家
は高陽ですね。彼の作品はほとんど読
んでいます。やはり清時代を舞台にし
たものが多いのですが、彼の歴史描写
や人物の描き方は本当に素晴らしいも
のがあります。読んでいて思わず引き
込まれそうになるんですよ」
高陽は、中国語圏で現代最高の歴
史小説家≠ニ評されている。日本でい
うと、吉川英治と司馬遼太郎を合わせ
たような作家だ。「彼の手に掛かると研
究者が取り上げない、全く目立たない
普通の人物でも、とてもすごい人に思
えてくる」というように、緻密に細部
まで取材し、歴史を正確に認識しつく
した上で、書き始めることで定評があ
る。どの作品も波乱万丈な筋書きのお
もしろさに加えて、人間性の気高さと
醜さをえぐり、中国社会に根づいた人
間の心情までも克明に描写しているグ
レードの高い作品だ。また、全10巻前
後からなる長編ものが多く、その数は
百を超える。
「高陽の作品では、『紅楼夢』の作者の
曹雪芹について書かれた『曹雪芹別傳』
や清時代の政府内部の人間と人間の戦
いを記した『燈火樓臺(とうかろうだい)』、清朝のすべて
の皇帝について描かれた『清朝的皇帝』
などが、特に読みごたえがあります」
残念ながら、これらの作品は、まだ
日本では翻訳されていない。高陽の作
品で唯一、日本で翻訳されているのが
『西太后』だ。これも、彼女が好きだと
いう清朝を舞台にしたもの。清朝末期
の実質上の女帝の物語は、知られてい
るところだ。
「歴史書、特に、春秋戦国時代の文献
には興味があって読んでいます。日本
で読むには何がいいのでしょう?」
逆に、彼女にこう質問された。歴史
ものが好きという彼女の読書の幅は、
小説にとどまらない。例えば、曾先之(そうせんし)
の『十八史略』などが、テキストとし
ては最適だろう。これは、司馬遷(しばせん)の『史
記』、班固(はんこ)の『前漢書』から始まって、李Z(りとう)・
劉時挙(りゅうじきょ)の『宋鑑(そうがん)』までの十八史をより所
にしながら、十八の歴史書のあらすじ
をまとめたもの。高校の漢文の教科書
にも登場しているのでなじみやすく、
日本語訳では『新十八史略詳解』など
が解説を加えていて読みやすい。
漢詩、唐詩は美しく素晴らしい
曲をつけて歌ったこともあるの
「漢詩、特に唐の詩が好きなんです。
これは読み物としてもそうですけど、
どちらかというと仕事につながるんで
す。実は私、作詞作曲もやっているの
で、唐詩は作詞するときにすごく参考
になっているんです。まだ発表したこ
とはありませんが、いつか自分で作詞
作曲して、自ら歌うアルバムを作りた
いと思っているんですよ」
五言絶句、七言絶句、五言律詩、七
言律詩など、韻をふむ定型パターンの
唐詩。唐詩家には、中国の古今を通じ
て最も偉大な詩人とされ、現実の社会
や民衆への思いを歌った杜甫、酒を好
み、情熱的でロマンチックな詩風を誇
る李白、自然の美しさを歌う王維、白楽
天の字(あざな)でなじみ深く、『枕草子』をはじ
め日本の文学にも多大な影響を与えた
白居易たちがいる。
「漢詩はほとんど読んでいますね。日
本の皆さんにもその素晴らしさを理解
してもらえたら……と思います」
彼女が読んだ中の何編かは、『新唐詩
選』と『新唐詩選続篇』、『漢文名作選』
に収められている。これらは有名な詩
人の作品を集めた本なので、一読すれ
ば、彼女が漢詩にひかれる理由がよく
わかるだろう。
ちなみに、漢詩とは、漢代に作られ
2023年02月22日
あの人がすすめる『10冊』(2)〜雑誌等の記事(63)
昨日の続きです。
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