
それは、別の顧客が窓口で銀行員から言われていたのが聞こえたことなのですが、
「こちらに、お日付けいただけますか。」
というものでした。へそ曲がりな私としては、「日付けなんて、やれないだろ」と思っていましたが、ふと思ったのは、「お名前戴けるでしょうか」と併せて考えたのは、「戴く」が「物をもらう」を丁寧に言ったのではなく、「〜して戴く(いただく)」を短くしてしまった結果ではないか、ということです。
「お名前戴けるでしょうか」は、「お名前をお聞かせ戴けるでしょうか」が元であり、銀行員氏の「こちらに、お日付けいただけますか。」は「こちらに、日付けをご記入いただけますか。」が元で、それぞれ「お聞かせ」「ご記入」という言葉を省いてしまった結果ではないかということです。
丁寧に言っているつもりが、逆に簡単に、省略することは、むしろ丁寧ではないことになります。
どうして、丁寧でない表現を、ビジネスの場で顧客に対して使うようになってしまったのかというと、仲間内で「その客の名前を、教えてもらえる?」というのを「その客の名前を、もらえる?」と、まさに物(この場合はデータ)を、受け渡しする感覚で言っていたのを、そのまま顧客に対して、ただし、「もらえる」を「戴く」にだけ言い換えて、「お聞かせ」「ご記入」の部分を復活させてしまったのではないか、ということです。
そういったことに無批判なまま、新入社員が「先輩」の表現をそのまま使って、どんどん蔓延してしまうのだと、私は考えます。
今回の場合は、「お日付け」の「お」にも、笑ってしまいました。「お金」を慣習的に使うのは、「金」が大切な物という共通の発想からきているのでしょうが、「日付け」まで「お」を付けるのはどんなものでしょう。ただし、「お時間、戴けるでしょうか」は相手の大切な時間という意味で、問題ないと思いますが。