私的にも日本で最も親しかったと思える、鈴木章代氏が語っています。
話題最前線
4 トーラスレコード・鈴木章代ディレクターが語るテレサ・テンの思い出
甘えん坊で寂しがり屋
台湾出身の人気歌手テレサ・テン(トーラス)が去る5月8日、旅行先のタイ・チェンマイで急逝(きゅうせい)とのニュースに、ファン・関係者はびっくり、落胆させられたのはつい先日のこと。所属先のトーラスレコードでは、急きょ、追悼盤「スーパーセレクション」を6月7日に発売した。
「別れの予感」「夜来香」「黄昏」「旅人」・…他、テレサ・テンのヒット曲を収録、彼女の魅力を十分再現させている。
トーラスレコード制作課主任ディレクター・鈴木章代さんは、テレサ・テンの思い出を次のように語っている。
「ウチへ移籍してきたのが1983年の6月でした。第一印象は、エキゾチックという感じ。こちらの目をじっと見て話をするんです。ドキッとするくらい。甘えん坊で、淋しがりやで……」
人気歌手(テレサ・テン)の人間性がひょいと出てくる。「いわゆる不倫という感覚は受け入れない強さを持っていて、歌詞等にも「なぜ、どうして?」と何回も質問しました。理解できぬまま歌ってしまったこともあったようですし、日本語の意味の広さ、アイマイさにも苦労していたみたいですね」
1953年1月20日、台湾雲林県に生まれる。台湾TVのど自慢で優勝したのが10歳のとき、以来、各地のコンテストで優勝、16歳のときには主演映画等、スター街道をヒタ走る。
1985年12月、NHK紅白に初出場。
「目の輝きが違っていましたね。紅白に出演が決まったことが、ホントに嬉しかったんでしょう。彼女に寄せられる期待も大きかったですし・・・」
鈴木章代ディレクターは、テレサの良き理解者だった。
「最初は私が妹でしたが、最近はいろいろ相談にノッたりしてたから姉さん役だったのかも。香水が好きで、私もよくいただきました。好きな色は、ピンクと紫でした。それと真珠を好まれて、アクセサリーなどによくつけていました。
そうそう、フカヒレが好きで、日本のお料理が大好きで……」体重が増えて困ったでしょう、の言葉はグッと飲み込んでしまった。
「実現はしなかったけど、彼女に子守歌を歌わせたかったんですよ」テレサへの思いが次から次へと続き、手にしたテレサのジャケット写真に目が移ったとき、鈴木さんの話が止まった。
「さよならテレサ、ホントにもう逢えないのね……」
ちょっと小首をかしげて、鈴木さんに何かを話しかけるかに見えたテレサだったが、彼女は黙ったままだった。