この雑誌記事の画像は、
https://x.com/changpian/status/1821716967956607443/photo/1
に投稿されたものです。(投稿者 Masao NISHIMURA氏)
テレサ・テンが
ケ小平に勝った
矢島釣次(やじまきんじ)
東京工業大学名誉教授
ここ一年以上も前から、遙かなる黒龍江岸から南
の珠江に至るまで、また東は上海から遠く新疆の迪
化にまで、テレサ・テン (中国名、ケ麗君)の歌が大
ヒットしている。北京の街頭では彼女のブロマイド
が売られ、彼女のテープは二十元の高値をつけてい
る。二十元とは、現在中国の労働者の半月分の賃金
に相当する。
ことの起りは、中国高級幹部の子弟が香港に旅し
てテレサ・テンの歌にすっかり魅せられて、彼女の
テープを買って広州に持ち帰ったところから始まっ
た。一波は万波をよぶのたとえ通り、テレサ・テン
の歌声のソフトな美しさに、中国大陸の青年は、す
っかりトリコになってしまった。
ある中国の文化部門の幹部は「老ケが未だ死なぬ
うちから、小ケに領導されてしまった」と激怒したと
いう。老ケ≠ニは四化経(四つの現代化という経文)
の祖、ケ小平のことであり、小ケ≠ニは、テレサ
・テンことケ麗君のことである。
この余りにも熱狂的なテレサ・テン・ブームに、
中国当局は大あわてで防戦につとめた。まず今年三
月二八日、中国の大幹部胡喬木が「革命歌を大いに
歌おう」と題して意見をのべた。「一部の地方で
は、革命的、前進的そして健康的な歌声がきかれ
ず、どこから来たのかわからない不健康な歌ばかり
歌っている」と。
四月八日には、軍の総政治部文化部が軍推薦の一
二の歌を通知し、十一期五中全会の精神を貫徹する
ために、四月一五日から五月一五日までプロの音楽
活動家集団を組織して、革命歌を歌わせようと大わ
らわの有様だ。
ある四月中旬の晩、部隊全員が革命歌斉唱を行っ
たところ、一人の昆明軍区の幹部が、率直な告白を
もらした。「共産党について行こう≠ニいう革命
歌があるが、私は共産党について行くこと四十年、
家は破れ、家族は亡くしてしまった! 別離の歌
だよ! ああ!」 と。
中国が最近宣伝に努めている歌は、「井岡山(中
共革命の拠点)の歌」「革命青年行進曲」などの「教
条歌」ばかり。四月上旬、香港のスター葉麗儀、李
龍基一行が広州に来て、四十年前の中国歌曲を歌っ
た。広州公演七日間は超満員、切符を買うために徹
夜が続いた。
たかが二十数歳の小ケの歌声に大陸の青年は魅了
されてしまった。老部の「四化経」も「社会主義は
天国」という主張も、小ケの前に脱帽したというこ
とである。テレサ・テンは日本では余りパッとしな
かった歌手だったのに。
「中国高級幹部の子弟」青年が、広州での火付け役の一人になったのかも知れないということのようです。
文末には、「テレサ・テンは日本では余りパッとしなかった歌手だったのに。」という気になる記述ありますが、この投稿が書かれたのはいつだったのでしょうか。
『TTV電視周刊』215期 P22〜P25の
「寶島歌聲憾大陸 遍地梅花開滿枝 從ケ麗君之歌風靡談起」
と題する記事に、
另外,據敵後情報透露,香港歌星葉麗儀、李龍基等人,也曾於四月間赴匪區在廣州演唱三〇年代的老歌,前後七天,也受到空前的歡迎。
情報還指出,共匪對這些香港來的藝人所唱的歌曲審查甚嚴,但是門票照樣是銷售一空,有些人甚至於K夜排隊才買到票。可見得自由世界的歌聲已把大陸群眾迷到如癡如醉的地步了。
(日本語訳=
また、敵陣後方の情報によると、葉麗儀(フランシス・イップ)や李龍基(リー・ロンキ)といった香港の歌手は4月、広州で1930年代の古い歌を歌うために匪賊地域に赴き、7日間にわたって大歓迎を受けたという。
インテリジェンスも、共産党は香港のアーティストたちが歌う歌を厳しく検閲していると指摘したが、それでもチケットは完売し、チケットを手に入れるまでに四六時中行列を作った人さえいたという。 自由世界の歌は、本土の人々を酔わせるほど魅了したのだ。)
という部分があります。
この雑誌は、1980年5月26日出版ですので、件の雑誌投稿も1980年と判断されます。
1980年と言えば前年2月にパスポート事件でアメリカに移り住んだころですので、『空港』以来、ヒット曲もなく、確かに「日本では余りパッとしなかった」は、その通りだったでしょう。
https://x.com/changpian/status/1821716967956607443/photo/1
には投稿者のコメントが2つ添えられています。
「最初期の文章(1980)」という年の記述は、私の確認と同じです。
Masao NISHIMURA
@changpian
ケ小平(老ケ)とテレサ・テン(小ケ)を対比する、おそらく日本語では最初期の文章(1980)。文末に「テレサ・テンは日本では余りパッとしない歌手だったのに」とある。彼女が「つぐない」で日本でも大復活を遂げるのはこの4年後のこと。
午前10:15 ・ 2024年8月9日
この記事にある. 葉麗儀フランシス・イップ、李龍基らの広州コンサート。情報がまだらだが、「四季歌」、「上海灘」、「森林之歌」「遙遠寄相思」、「天涯歌女」「恨不相逢未嫁時」を歌ったとのこと。同年のさだまさしの北京公演やゴダイゴの天津公演よりも早い。私が知っているテレサ・テンの歌った歌は、「四季歌」「天涯歌女」だけです。
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