
そもそも「正しい(?)手の重ね方」について曖昧になってしまうのは、頭・体の傾け方の角度、言い方を変えれば側面からの視点を強調していて、正面のことについてのことについては触れられていないからかも知れません。
AllAboutの
「シチュエーション別の正しいおじぎ」でも残念ながら手の重ね方についての記述はないのですが、きれいに、かつ自然に手を重ねている右のような写真がありました。
肘が体の側方へ突き出さず、手も体の中心部ではなく、下の方に向いています。
手を重ねるお辞儀は通常女性のものなので、女性から「女性がお辞儀するときの手の位置について」というタイトルの質問があります。
質問中で
>貞節を示すと言う意味があるのだと聞いたことがあります
というのは、どうも怪しい(ただし、「相手に危害を加えない」意味合いがあるらしい)のですが、
>例えばおへそのあたりで手を組む女性も、けっこう見かけます。スーパーのレジ係の人などにもよくいます。手の平は、人によって、後ろに向けたり、下に向けたりしています。
は、率直な疑問だと思います。
回答の中には、
>右手を下、左手で右手の上において『私はあなたに危害を加えません』という意味だそうです。
というのがあり、このことは他のサイトでも書かれています。(右手は利き手という前提)
別の回答。
>女性が頭を下げるときに手を前にやるのは、何もしないと肩がいかついかららしいです。
>手を前にすることで肩に丸みがでるらしいです。
これも納得する回答です。女性について手を重ねることの理由になります。腹の前で重ねると変に見えるのは、肘が左右に突き出るだけでなく、肩もやや持ち上がり、手を重ねて肩に丸みを持たせることの逆効果になります。
別のサイトでの質問もあります。
>丁寧なお辞儀をするときは両手を前にして重ねますが、このとき左右どちらの手が前になるのが正しい礼儀作法なのですか?
と質問しているのに対して、
>叉手(さしゅ)が正しい重ね方です。
という回答に「叉手」という存在を知ることが出来たのは良いのですが、
>皇室や神社の正式な儀式でも使われる古代からの伝統作法ですので
というのは、回答者の間違いのようで、仏教での所作と思われます。そして、
>左手をじゃんけんのパーにする。
>右手はグーの形にする。
>左手の親指を右手のグーでにぎる。
>そのままとじれば、叉手(さしゅ)になります。
と述べています。左手が上になります。
叉手については別のサイト(How to 坐禅)で次のような写真と説明があります。

>1.左手の親指を、右手で軽く握ります。
>2.左手の他の四指を、右手にかぶせます。
これによると左手が上になります。
叉手について、次のような説明を見つけることが出来ます。
「親指を中に右手を握り、さらにその外側から左手を重ねる」という写真や説明もあります。

(「瑞雲寺だより(第4号)」の写真を紹介させていただきました。)
結果として、叉手では「右手が上」「左手が上」の両方が見つかります。

さて、左の写真(クリックするとリンク先のページで元のサイズで見られます。)を引用して、
>右手で左の親指を掴むような形で、お腹のところに重ねた手を置いています。
>しかし、ちょっと違和感を感じました。
>私が、良いお辞儀と思う姿は、左手の上に右手を重ね(この逆も可)両手は抱え込むのではなく、伸ばしてお辞儀をする、と言うのが、綺麗に見える、と教わったように記憶しています。
この写真を最初に見たとき私も同じように思いましたが、上述の「叉手」と考えるとまんざら間違いではないことになります。指導者もそうさせたのかも知れません。
ただし、仏教の所作を一般的なものとして教えるのはどういうものかとも思います。

さらに、この「叉手」に伴う肘の形を示す写真や図を見ると、意外と違和感を持ちません。
例えば、左の図の女性は、手を重ねていますが、お辞儀をしていません。この図は、「坐禅のすすめ」というページにある叉手を示すもので、
>立っている時、歩く時の手の作法です。
という記述があります。
お辞儀を伴わない動作でなければ違和感はないのです。
とても興味深い記述をしてある「おかしな女性の立礼」というページを見つけました。全文をここで紹介したいくらいですが、興味のある方は当該サイトで読んでください。
概略としては、作法としての姿勢は、「気をつけ」と「休め」があり、さらにそれぞれに立位と坐位がある。礼をするときは、当然「気をつけ」の姿勢でする。
坐位の「休め」では手を体の前で合わせる。(確かに、体の横に手を垂らしていると疲れてしまうので納得。)立位の「休め」もそれに準じて、体の前で手を合わせる。(後ろに手を組んで「休め」は軍隊式。人の話をゆったりと聞くときには、前で手を合わせる(組む)のはよく見かけるし、私もします。)
だから! 体の前で手を合わせて(=「休め」で)お辞儀をするのは礼を逸している。
そういう内容です。
私としては、大変に納得のいく説明です。例えば、手を合わせて人の話を聞いていて、最後に「ありがとうございました」というときに、その手を体の両脇に持って行って頭を下げます。手をそのままで、お辞儀はしません。
前回
書いたように、レジの人の手は通常おなかのあたりにあります。そのままの位置でお辞儀をするのは、下げるのを面倒に思って楽をして「休め」をしながら、「ありがとう」と言っていることになると思ったのと同じです。
そのサイトでは、「男女とも同じで良い」と書かれていて、私はそれを否定はしませんが、男性が体の前で指一本でも合わせて礼をしたら正直なところ違和感がありますし、逆に女性が体側に手を持っていてお辞儀をしたら、ちょっと堅い感じがします。(このサイトでは、「少し」前に手を出すことを推奨しています。)

キャビンアテンダント(客室乗務員、スチュワーデス)のお辞儀の写真を探してみたところ、養成学校での様子を写した写真がありました。背筋は伸びていてきれいですが、手が上がっているのには違和感があります。
羽田空港 JAL CA ファッションショーというページがあり、中にお辞儀をしている写真がありますが、極端に手は上げていません。
手の位置のことにまでは触れていないようだが、外国人が見た日本の礼(お辞儀)について触れたページ「Bowing Ojigi おじぎ」も面白い。
追記:
変なお辞儀
変なお辞儀(2)…このページ
変なお辞儀(3)
変なお辞儀(4)
民族衣装であるチマチョゴリのリボンの結び目が、胸の下ギリギリなので、その構造上、手は重ねてその下の胃のあたりに置きます。
そうして礼をするときれいに見えます。
しかし、洋服を着た人が、わざわざそうする必要はありませんし、違和感があるのは当然です。
現在、「韓国(朝鮮)式肘張りの礼」がデパートからスーパーまで蔓延しています。企業のマナー担当者は、変な習慣が定着しないうちに、正しい「和風の礼」を復活させるべきです。
「肘張りの礼」「韓国(朝鮮)式の立礼」という言い方で、私たちが違和感を感じる理由をすっきりと理解出来ますね。
おっしゃるように企業のマナー担当者や接客マニュアルの作成者の影響が大きいことをを自覚してほしいですよね。言葉や所作はどうしても(あるいは当然?)、時の流れと共に変わっていきますが、心地よく、徐々に変わってほしいものです。
昨夜も、以前から気になっていた言葉の使い方で「とうとうここまで来たか」と思わせるものを写真に撮ったので、これからブログ(2011.6.20)に掲載します。