
これがニュースに関わる写真、それも報道記事と同等の面積(文字と写真の比重を面積で比較するのは無理がありますが、視覚的な訴えという点では、ある程度許されることかと思います。)を取っているとすれば、考え込んでしまうのではないでしょうか。
少し前にLINE NEWSというアプリが発表されましたが、これはその「ニュース」の1つの写真です。
もとの「ニュース」はこれです。
メインの記事は「大阪の『地下河川』と呼ばれる排水設備の完成が急がれる」という内容で、写真の容器の先端から水が飛び出ることは、ニュースの内容とは全く関係ありません。
F-10Dでは全部の記事が画面に収まっていませんが、関連する文章で入りきれないのはあと2〜3行だけです。
個々のニュースの他に、indexがあります。こんな感じです。
大小のサムネールとごく短い文によって、読みたいニュースを選択するようになっています。
「目は口ほどに物を言い」という諺がありますが、「映像は文章以上に訴える」というののも真実だと思います。その意味で、なかなか上手ではないかと思いました。従来の携帯電話よりも解像度の高いスマホを意識しての新しいスタイルで、なかなかよく考えているなと思いました。
次の記事を見てみます。
女性駅員が乱暴な男を取り押さえた。しかも、背負い投げ。柔道の心得のある駅員なのでしょう。写真もそんな感じです。でも、おかしいです。後ろに立っているのは駅員の制服ではないようです。それに背負い投げをされた瞬間をこんな見事な写真に撮れるでしょうか。周囲も真っ白。2人の顔も見えないようにうまく配置されています。
つまり、この写真は記事とは全く関係のないスタジオでの、いわば汎用の、そして1枚いくらで売られている商用写真だと分かります。
冒頭の水が容器から飛び出ている写真と同じで、きれいに撮れているけれども、記事とは全く関係のない、つまり「報道用写真」でないのです。
そうすると、indexの写真の存在を褒めましたが、逆に記事とは関係のない写真が含まれていることになります。写真を見て記事を選んだら、写真と記事は関係なかった、ということが十分あり得ます。
ほかにも類似の写真はたくさんあります。
漁船転覆のイメージで、折り紙の船がきれいな水に沈もうとしている写真。よくこんな写真を見つけたと、感心するほどですが、この転覆事故では「一人死亡」です。家族がこの記事に使われたこの写真を見てどう思うでしょう。単に記事と関係のない写真というだけでなく、人の心を傷つける写真ではないでしょうか。
LINE NEWSの写真の扱い方を知らないと、一瞬この包丁が犯行に使われた写真のような気がしてしまいます。包丁がどんなものか、誰でも知っています。わざわざここに、犯行とは関係のない包丁の写真を載せることに「報道」という点でどんな意味・価値があるのでしょう。
さらに困るのは次のような例です。
今までの例(indexを除く)は、みな記事とは関係のない写真をトップに持ってきたものでした。
さて、この福島原発はよその原発ではないことは分かります。でも、記事に関わっている写真なのか、過去の写真なのかが分かりません。
慣れない人は、「今はこんな状況なのか」と誤解をするでしょう。いや、実際私にも分からないので、実は今の写真かもしれません。でも、たしか覆いが作られていて、それが写真にはっきりと写って見えそうなので、多分古い写真と私は思います。
明らかに関係のない写真以上に、その意味で不適切な写真の利用だと思うのです。
そもそも、どのページも大きな写真の他は、数行の文章だけです。しかも他のサイトの記述を2つくらい、2〜3行にまとめてリンクをしているというパターンの繰り返しです。
インターネット上のニュースサイトの「浅さ」に、従来の紙の新聞と比較したときの不安がありますが、それ以上の不安・不満を感じます。
タイトルには「×」だけでなく「○」も書きました。
その一つはスマホでスクロールをするときの反応です。言葉で表すのは難しいのですが、スワイプする際の画面の動きが大変によく出来ています。記事の切れ目でぴたっと止まりますが途中で止めることも出来ます。他のアプリでは私はまだ経験をしたことのないことです。
電車に乗っているときなど、「ちょっと見る」ことを意識しているようです。
「見て」そして「読む」気にさせる、上手な写真の使い方が最初の好印象で、それが「○」なのに、写真の内容が分かるにつれて「×」に反転しました。可愛さ余って憎さ百倍という状態(褒め過ぎか)です。
LINE NEWSの記事の充実ときちんとした写真の利用をすることを願っていますが、株式会社LINEは報道機関ではありませんから、どうも期待はできそうもありません。