2013年09月09日

再び「こんにちわ」を考えてみます

 以前、「こんにちわ?〜タッチ」という記事を書いたのですが、それについてコメントを頂きました。
 コメントの要旨は、確かに語源的には「は」だけれども、「わ」も使われてきており、そちらも定着するのではないか、というものです。
 そこで、再び「こんにちわ」についてちょっと考えて見ます。
 冒頭に写真か絵を置くようにしているので、こちらから借りてきました。

konnitiwa.gif


 さて、どこから始めましょうか。


●第1章
 まず、「『は』が正しいか、『わ』が正しいか」ということで、話題になります。その点で言うと、「『は』が正しい」という人は沢山いますが、「『わ』が正しい」という主張はさすがに見かけたことがありません。
 『は』がの方がちょっと、形勢有利ですね。理由は助詞の『は』から来ているから、という理由で一致しています。
 でもちょっと考えてもいいことは、「言葉の『正しい』とは何か」ということです。言葉はコミュニケーションのために使われますから、共通の認識で語彙や文法(これも、また話し始めると限りなく続きそうです)が使われないと、適切なコミュニケーションがとれず、時にはトラブルを引き起こす可能性があります。
 ところが、ここでまた「共通の認識」が怪しいのです。時代や地域、あるいは人間の集団、年齢の集団などによって、互いに差異が生じます。だから、「共通の認識なんて持てない」から、「正しい言葉なんて持てない」ということになります。
 それを言い張ると、誰かに「馬鹿!」と言って相手が怒ったら、「私の『馬鹿』は、『あなたを尊敬している』という意味だ」と言い訳ができることになります。でも、相手は納得してくれないでしょうね。
 だから、言葉の正しさというのは、ほぼ同じ共通認識を持って使用する語彙や文法ということになるでしょう。「ほぼ」でしかありえません。
 ただし、これは自然の言語の場合であって、コンピュータの言語(プログラムなど)のように、きちっと決められていて、それを利用者が守る義務がある場合は別です。

●第2章
 さて、こうなると、『わ』が正しいという人がいないということで、『こんにちわ』を使いたいという人がいなくなるかというとそうではありません。「正しくないけれども、使ってもいいではないか」という考えなのでしょう。
 それは、「本来は助詞であったが、助詞としての機能をなさず、『こんにちは』が慣用句となっており、しかも文末が助詞で終わることはむしろ不自然な印象を与える。『こんにちわ』で困ることは何もない」っというような理由だと思います。
 と、申し上げるのは(『と』という助詞が、文頭に使われている!)、私もある程度そう思っているからです。
 でも、これで話が終わってしまってはつまらないので、さらに考えて見ることにします。

●第3章
 私は『こんにちわ』の使用頻度が高まってきてきたのは、実は、ワープロ・パソコンのせいではないかと思っていました。具体的には、ローマ字入力が原因で、『わ』を使ってしまうようになったのではないかと思うのです。
 ローマ字は、アルファベットを利用した日本語の表記法の一つです。ルールとしては、日本語の「音(おん)」をアルファベットの文字で表すということです。普段ローマ字を使うことはないので、迷うことがあります。
 それが、実は助詞の『は』です。
 「私は」→「わたしは」→「Watashi ha」or「Watashi wa」。さて、どちらでしょうか。(shiの表記については今は触れません。)

 これをキーボードからローマ字入力をするときに迷う理由があるのです。
 かな表記では「わたしは」ですが、キーボードをたたきながら、頭の中では「ワ・タ・シ・ワ」と言っている訳です。「音をアルファベットの文字で表す」というルールからすれば、「wa」でいいはずです。実際、そうだと思います。
 ではローマ字の「wa」をかな書きにすると…「わ」が自然です。
 かつて、ワープロ・パソコンのないころには、「ローマ字入力」なんていうものが存在せず、ローマ字の使用頻度も少なかったのですが、今は多くの人が多分ローマ字入力をしていて、私と同じような迷いをしているのではないでしょうか。
 私の場合は、「こんにちは」ですから迷いますが、元々「こんにちわ」の人はむしろ迷わず「konnichiwa 」と打ち、「こんにちわ」とディスプレーに表示させて何の迷いも持たない場合が多いのではないでしょうか。

 ちなみに、私がローマ字でさらに迷うのは、助詞の「を」です。これも「o」でいいような記憶ですが、「これを」は「これお」と同じ「koreo」になります。幸い、「今日は」のように助詞の「を」で終わる慣用句がないので、「『は』か『わ』か」の議論は生じていません。

 私は、「こんにちわ」の出現はワープロのローマ入力の登場に伴うものだと思っていましたが、冒頭で紹介をしたコメントによると
「昔の天地真理『さよならこんにちわ』吉田拓郎『こんにちわ』という曲もある」
とのことなので、必ずしもローマ字入力が理由ではないようです。

●第4章
 「わ」を使う、それ以外の理由があるようです。
「こんにちわ」 「こんにちは」 - 発言小町 - 読売新聞には多くの人の様々な意見があっておもしろいのですが、中に
「『こんにちわ』は、親しみを込めた時とか、可愛く見せるために書くそうです。」
といった記述もあります。
 「可愛く見せる」というのは、公的な文章でない場面なら「どうぞご自由に」ということでしょうが、インターネットの普及で公的・私的の区別がつかない上、遊び心の文字表記が増えると、それに慣れてしまって、「公的」「正式」と思う人も増えてしまうのではないでしょうか。

 また、
「気持ち悪いです…
 きょうわ 花お 買いました。
 あしたわ 公園え 行きます。
 こういう文と同じことでしょう。」

という発言もあります。私は「同じ」ではないと思います。「今日は」は後に続かずに使われるのです。

 この例で思いつきましたが、
「公園へ」はローマ字で、「kouen e」(または「koen e」)になりますが、)や「konnichi wa」は見て、「気持ち悪く」ならないのでしょうか。

 また、
「『言葉は変わる』のと、無知なのは別」
という発言もあります。
 自分の名前が分かるような文章で「わ」を使うことで、「無知」と思われるのは得策ではありませんね。あえて「わ」は使わない方が無難かも知れません。
 「は」にこだわる人がこの世から消えてしまえば、その心配もなくなりますが。

●終わりに(参考)
こんにちは?こんにちわ? − トクする日本語 − NHK アナウンスルーム
ではちょっと違った視点を提供しています。そもそも「は」がfa(ふぁ)と発音されていたのが、「わ」の
発音に変化したので、助詞の「は」は、「わ」ではない、というもの。
 でも、今では同じ発音ですよね。

『こんにちわ』撲滅委員会
 以前にも何度か開いたことがあります。会員の募集もさすがに打ち切られています。同じようなことの繰り返しになるからでしょうね。


 結論として、かなり先「こんにちわ」が普及するような気がしますが、そんな先まで生きそうもない私は、一生「こんにちは」だと思います。
posted by kewpie at 00:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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